THE ASBESTOS / せきめん読本

注意)
 石綿製品製造関連企業の協会より発行された本です。有用な情報(歴史的資料など)を含んでおりますので敢えて掲載いたしましたが、
企業の立場で発行されているものである事に留意してお読みください。また、1996年発行当時の内容のまま公開しておりますので、現在の状況と合致しない内容が含まれている可能性がある事にご注意ください。

第2章 石綿を用いた製品の製造と用途1)

  1. 石綿製品とは
    1. 石綿の種類と石綿製品
    2. 石綿の繊維長さと用途
    3. 石綿製品の特徴
  2. 石綿の応用製品
    1. 石綿紡織品
    2. 石綿含有建築材料
    3. シール材(石綿工業製品)
    4. 摩擦材
    5. その他の用途
  3. 石綿製品の製造工程
    1. 抄造による建材の製造方法
    2. 押出による建材の製造方法
    3. 住宅屋根用建材の製造方法
    4. 石綿ジョイントシートの製造方法
    5. 石綿紙・板の製造方法
    6. 石綿紡織品の製造方法
    7. 摩擦材の製造方法
2.1. 石綿製品とは
2.1.1. 石綿の種類と石綿製品

 石綿は、繊維状の鉱物で、人造あるいは天然に存在するあらゆる種類のなかで最も繊維が細く、クリソタイルの直径はおよそ0.02〜0.06μmである2)。その特徴は、燃えず、腐らず、熱や薬品に対して耐力があり、他の物質とも親和性があるなど優れた性質を多くもっている。この長所を生かし石綿は、重要な工業の原材料として幅広く使われている。

 石綿の用途は非常に広大な工業分野に拡がっており、多くの場合、石綿繊維のままの姿で使用されることは少なく、他の原料と組み合わせて用いられている。すなわち、天然・合成ゴム、プラスチック、セメント、天然または人造繊維と組合わせて、紡織品、ガスケット、パッキン、ブレーキライニング、クラッチフェーシング、スレート、その他の建築材料等と広範囲に使用されている。また、石綿の種類は、第1章「石綿の基礎」で述べているように、クリソタイル(温石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の3種類が実用されてきた。このうち、シール材等の工業製品としてのクロシドライトは昭和49年に、高圧石綿セメントパイプは昭和60年に使用を中止した。また、アモサイトの使用は建材を最後として平成5年に使用を中止している。

したがって、我が国における石綿の使用は、平成6年以降、クリソタイルのみが使用されている。

2.1.2. 石綿の繊維長さと用途

 石綿は、産地によってグレード(クラス:級)が多少異なり、そのクラスによって製品への使用範囲がほぼ限られる。次に石綿の種類別にそのクラスによる用途を示すが、石綿製品で過去に製造された代表的なものも含まれている。

(1) クリソタイル石綿の用途等

1) クルード(No.1及びNo.2)
 現在ではほとんど産出されなくなったが、砕鉱作業を行っていないので繊維が長く、高級の紡織用原料として使われる。すなわち、電気分解用隔膜(過去に製造使用)、特に細い番手の糸や布、その他有機繊維の混入をきらう高熱用パッキンや高熱用布、または耐薬品性など特に高純度を必要とする紡織品に使われる。

2) 3クラス
 一般に紡織用としてもっとも多く使用されるほか、特殊のシートガスケットに使われる。

3) 4クラス
 主として石綿高圧管、石綿スレート、フレキシブルボード、シートガスケット等に用いられ、場合によっては石綿紙にも使われる。

4) 5クラス
 石綿紙の材料として使われるが、我が国では主として石綿スレートその他の石綿セメント製品および石綿板の主原料として用いられる。またモールドブレーキライニングにも使われる。

5) 6クラス
 主として製紙用および石綿セメント製品に5クラスと共に多量に使われている。

6) 7クラス
 プラスター、ゴムの充填材料その他に使用される。その他のものとして石綿の繊維が細かいので細菌のろ過材に適する。

(2) クロシドライト石綿の用途等(使用禁止)

 クロシドライトは、含有する酸化鉄のために色は青い。非常に耐酸性が強く、かつ強度が大であるが、クリソタイルやアモサイトに比べ耐熱性は同等かやや劣る。この特質を応用して、長繊維は耐酸用の紡織品、高圧管、シートガスケット等に用いられてきた。また中間の長さのものは吹付け石綿として建築用に用途があった。

(3) アモサイト石綿の用途等(使用禁止)

 アモサイトは、淡茶または鼠色で長い繊維が多い。繊維はクリソタイルより硬くピンピンと突っ張っているため、スプリングファイバーとも呼ばれ、柔軟性があって強靭である。また、耐熱性ではクリソタイルやクロシドライトよりも優れている。このアモサイトは、保温材としてそれ単体で板や筒に成型したり、つなぎ材としてマグネシア、けいそう土に混入して、近年までけい酸カルシウム板にも使われていた。弾力があるので、石綿布団の中綿にも用いられることが多かった。

2.1.3. 石綿製品の特徴

 石綿の性質は第1章で述べているが、一般的に石綿はつぎの7つの特徴を持っている。

1) 引張り強さが極めて大きい……高抗張力……
2) 燃えないで高温に耐える……不燃、耐熱性……
3) 熱、電気を通しにくい……絶縁性……
4) 薬品(酸、アルカリ)に侵されにくい……耐薬品性……
5) 腐らないで変化しにくい……耐腐食性、耐久性……
6) 表面積が大きく、他の物質との密着性に優れている……親和性……
7) 柔軟でかつ磨耗に耐える……耐磨耗性……

 石綿の種類は通常6種類に分類されるが、産業に実用されたものは蛇紋石系のクリソタイル、角閃石系のクロシドライトおよびアモサイトである。後者は現在使用が禁止されている。したがって、現在使用されている石綿は、クリソタイルのみであるが、上記の特徴をバランスよく持ち合わせ、一つの物質でありながら産業界から要求される過酷な条件を満足することができるものである。

2.2. 石綿の応用製品
2.2.1. 石綿紡織品

 石綿紡織品とは鉱物繊維である石綿を主原料とし、これに綿花などを混紡した糸を布状あるいは紐上などに製織編組したものを総称していう。

 通常は繊維を集合して、まず糸の形に作られる。糸の太さは1mm程度でこれを中間製品とし、それぞれ適当な製品、例えば織物(石綿布)、編物(石綿パッキンヒモ)などを製造する。一方、中間製品の糸を作らずに直接繊維から製品にする場合がある。例えば、フェルト、不織布はこれらに属するものである。

 石綿紡織品は主材料が石綿であるために、そのまま石綿の特性である耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性などが生かされ、各種パッキン等の工業材料として使用されている。

 また過去には、多くの特徴を持つ石綿は、船舶の配管等の保温、電解用石綿隔膜布、防熱布団の外被、防火幕、自動車部品等にも用いられていた。

2.2.2. 石綿含有建築材料

 石綿セメント建築材料は、石綿繊維とポルトランドセメント等からなるもので、石綿繊維と使用されるマトリックスの馴染み(親和性)がよい。また互いの補強効果も良好のため、普通のセメント建材に比較してはるかに引張り強さが大きい。このように石綿は鉄筋コンクリート中の鉄筋のような補強の役目を果たしている。したがって、大きな板や薄い板を製造することが容易となり、丈夫でしかも軽量なものができる。

 石綿セメント製品はオーストリアのハッチエック氏が1900年に石綿スレートを発明し、エタニット社が屋根材として製品化したのがはじまりである。我が国では、石綿スレートを初めて使用した元G.トーマス邸が明治37年(1904年)に建てられた。また神戸王子公園に文化財として保存されている元ハンター邸は明治40年(1907年)に石綿スレートが使用され、この石綿スレートは約90年の風雪に耐えた。

長い歴史を経てきたハンター邸

長い歴史を経てきたハンター邸

 一般にスレートは50年以上の耐用年数があると評価3)されている。また、わが国での石綿スレートの製造は大正3年(1914年)がはじまり3)で、現在では種々の石綿スレート建築材料として広く利用されている。

 多くの石綿セメント建材製品は、石綿繊維とポルトランドセメントからなるもので、セメントの脆さを補強する役目を果しており、つぎの特徴がある。

  1. 不燃性である
  2. 耐候性がよい
  3. 腐食しない
  4. 軽量で強度がある

 次に現在製造されている石綿建築材料の特徴をあげる。

(1) 波形スレート

 一般に軽量強靭で塗装の必要もなく腐食しない。下地材としての野地板も不要で弾力性に富み、屋根、壁用として工場、倉庫、住宅、鉄道施設などに広く使用されている。また、内装あるいはビルの外装などにも利用され妙味をだしている。

 波の形状により、小波、中波、大波、超大波、リブ波などがある。また、さらに材質を強化した高強度大波板、着色を施したカラー波板などがある。

(2) 住宅屋根用スレート

1) 平形屋根スレート
 表面の形状が平板状の屋根材で、表面に小さな溝状の凹凸をつけたものである。主に野地板の上にふく。

2) 波形屋根スレート
 表面の形状が等波状で、波形には丸波形状、リブ波形状がある。主に野地板の上に葺く。

(3) ボード類

1) サイディング
 サイディング材にはリブ波状および平板状の2種類がある。リブ波状のものは、縦ばり、横ばり工法により斬新なデザインが得られる。また平板状のものには、表面に凹凸をつけた製品もある。主に外装材に用いられる。

2) フレキシブル板
 ボードの代表的製品で、建築用ボード類の最高峰にある。高い強度と弾力性をもち、加工性もよく、釘のじか打ち(厚さ4mmまで)や切断加工も容易で、ボードの持つ性能をよく備えており、内外壁、天井に使用される。また厚板は新幹線鉄路等の遮音板等に使われる。

3) 平板
 大平板とも呼ばれるボードの普及品で、性能はフレキシブル板に次いであり、釘のじか打ちや筋折りなどはできないが、軽量防火材として内外装にひろく使われる。

4) 軟質板
 無機繊維、セメントのほか特殊繊維を配合し、釘のじか打ちや筋折りなどフレキシブル板と同様に加工性のよい内装材である。多少乾湿による伸縮があるので外装には適さない。

5) パーライト板
 セメントのほかパーライトを原料とし、耐火、断熱に対してすぐれた性能をもっている。きわめて軽量で釘打ち、切断などの加工が容易な製品である。

6) パルプセメント板
 セメント、無機質繊維、パーライト、パルプおよび無機質混合剤を原料とし、抄造成形したものである。鉱物系建材のすぐれた不燃性、耐水性、それに有機性繊維の配合によって吸音性、保温性および施工性の容易さを兼ね備えている。

7) スラグせっこう板
 スラグ、石膏を主原料とし、無機繊維を補強材として効果的に配合した、軽くて加工性のよい製品となっている。主に内壁、外壁に用いられる。

(4) 押出成形セメント板

 セメント、無機質混合材等を主原料として、押出成形したもので、断面形状の自由性を生かして建築用内外装資材および土木資材として利用される。

2.2.3. シール材(石綿工業製品)

 諸工業に使用されるシール材とは、パッキンやガスケットを総称している。一般にこの2つに分類される。

 シール材は通常、溝などに封入され、一対のシール部分が互いに運動する箇所に使用される封入材をパッキンといい、配管等のフランジ部分に固定され動くことがない箇所に使用されるものをガスケットという。

 シール材は、タンク(反応釜)、パイプライン、機器等を接続する際の継目からの流体漏れを防止するために必要欠くべからざるものとなっている。これらの機器等には、強酸、強アルカリ等の流体を使用、また高温あるいは低温、そして高圧に耐える等、シール材として条件を満たす必要がある。また、接面漏れを防ぐためにシール面への馴染みを良くすると共にシール材の中を透過する浸透漏れも、特に気体では問題となることがある。これらシール材として要求される条件はつぎのことを満たす必要がある。

  1. 各種流体に耐える材質である
  2. 内圧または外圧が高いことが多いため強度が大である
  3. 広範囲の温度に耐える
  4. 連続使用に耐える

 さらに、パッキン、ガスケットはシール面に挟まれて使用するため、永久歪みが小さく、また復元力が必須条件として加わる。

 シール材は石綿を主原料として、それに繊維を結合するバインダー(ゴム等)を加え、成形されるもので、その代表格として石綿ジョイントシートがある。また、石綿糸に気密材・潤滑材等を含浸して編組したグランドパッキンがある。

 シール材と呼ばれる殆どのものは、一次加工した石綿製品を、または基礎材料を複合する方法で加工することによって、さらに性能の高いシール材としている。この基礎材料となる一次石綿製品として、主なものは石綿糸、石綿紡織品、石綿紙、石綿板(ミルボード)などがある。つぎにシール材の概要を述べる。

(1) パッキンの種類とその概要

 石綿パッキン(編組形パッキン)は、軸シール等に多く用いられ、シリンダー内のグランド(溝)部に装着するための封じ込め材で、通称「グランドパッキン」と呼ばれる。このグランドパッキンの構造は、通常気密材および潤滑剤として表面と内部にふっ素樹脂、黒鉛、油脂等を含ませてシール性能を向上させている。

 グランドパッキンの編組は、紐状に束ねた「撚り」および編み組みする「丸打」、「角打」に分類することができる。その構造図を図2-1に示す。

1) 丸打グランドパッキン
 丸打編組は、ブレーダー(編組機)により袋編という方法で芯をつくり、その上に幾重にも重ね編みして所定の寸法まで被せる方法で制作される。
 袋編の特徴は柔らかく曲げに対して柔軟で、グランド等への装着が容易である。また容易に含浸材を多量に含ませることができる。

2) 角打グランドパッキン
 角打編組は、ブレーダで一回の編組で編まれ、編組系が内部を通る構造となっている。この角打には8本の糸を8の字に編む「八つ編」と4の倍数で編む「格子編」がある。編組は締まった状態で固く、正四角形に編組できる特徴をもっている。
 また、編組糸が中を通っているため、使用中磨耗等により糸が磨滅しても崩れにくい編組構造となっている。

3) プラスチックパッキン
 石綿繊維に黒鉛等の気密材および少量の固形材を混ぜ、紐状または角形断面をしたリング状に成形したもので、編組パッキンと同様に使用される。取扱いには多少脆く崩れやすいため外周を綿糸等で編組したものもある。

図2-1 グランドパッキンの構造

図2-1 グランドパッキンの構造

(2) ガスケットの種類とその概要

 ガスケットは、使用される条件によって、様々な素材が使われ、多くの種類がある。石綿を含有する代表的なガスケットはつぎのものがある。その構造図を図2-2に示す。

1) 石綿ジョイントシート
 石綿ジョイントシートは、重量比で65%以上の石綿とゴムバインダー10%以上及びゴム薬品、充填材等を配合し、緻密で均一な厚紙状に加熱圧縮したものである。
 製造方法は、大小2本の鋼鉄ロールをもつアスベストシーターと呼ばれる設備を用いて製造する。大ロールは加熱し、小ロールは冷却して、その間隙に上記の混合攪拌した原料を投入し、加熱されたものに付くゴムの性質を利用して大ロールに巻きつかせ、徐々に間隔を広げて所定の厚さまで圧縮積層していく。石綿繊維は回転方向に並ぶため、方向により引張り強さは異なる。
 製板された板状の石綿ジョイントシートをタガネ、ナイフ等で打抜き裁断して所定形状のガスケットに仕上げる。
 近年はバインダーに特色を持たせたことにより、クリソタイル石綿で耐アルカリ性から耐酸性のものまで幅広く製造されている。

2) うず巻形ガスケット
 高温高圧用のセミメタリックガスケットの一種で、気体や蒸気のシールよりも、むしろ液体に適している。特に、燃料、石油精製工業、化学工業等に広く使われ、ガスケットとしての優秀性が認められ、信頼性の高いものとなっている。
 うず巻形ガスケットの本体の基本構造は、断面がV形またはM形にくせ付けしたテープ状の金属薄板(フープという)に石綿紙(フィラーという)をはさみ、バームクーヘン様に巻き取ったうず巻き状をなすものである。巻き始めと巻き終りはフープ材を数周空巻きし、点溶接で止めて板状のガスケットにしたものである。
 ガスケットの使用によって内外周に補強用金属製リングを装着したものもある。

3) 包みガスケット
 ふっ素樹脂(四ふっ化エチレン樹脂)包みガスケットは、内部に比較的弾性、復元性のよい芯材を用いたガスケットである。例えば石綿フェルト、石綿ジョイントシート、石綿板、ゴム板などを芯材とし、流体に接する外部を厚さ0.4〜0.6mmのふっ素樹脂で被覆したものである。主としてガラス管、磁製管、ガラスライニング機器のような接合面が比較的脆弱で締付力に限界があるような箇所に使用される。

4) セミメタリックガスケット
 セミメタリックガスケットは、金属と非金属の特長を組合わせたものである。代表的な物としては耐熱性のある石綿板や石綿ジョイントシート、石綿糸等を中芯として金属の板で包む形状に成形加工したものである。石綿ジョイントシート等のソフトガスケットよりも広範囲の温度、圧力に耐えることができる。

5) ふっ素樹脂含浸石綿ガスケット
 石綿布、石綿テープ等にふっ素樹脂ディスパージョンを適量含浸させたものを厚さ数mm程度のガスケット状に成形加工したものである。使用箇所はガラスライニング等の脆弱なフランジ面や開閉頻度の多いマンホール用ガスケットとして有効に使用される。

図2-2 ガスケットの構造

図2-2 ガスケットの構造

2.2.4. 摩擦材

 摩擦材は、石綿、結合材、摩擦性能向上材(フリクションダスト)を原料として製造される。主原料となる石綿は繊維性、耐熱性、耐磨耗性等の性質により摩擦性能を向上させている。ブレーキライニングに使用する石綿は、一般にウーブンでは4クラス以上の長繊維のものが、またモールドには5クラス以下の短繊維のものが一般に使用される。

 ブレーキライニング、クラッチフェーシングと呼ばれる摩擦材は、基材となる石綿をゴム、合成樹脂あるいはその類似物のような有機物結合材で結合させた有機ライニングと焼結金属のような金属ライニングに分類できる。今日では有機ライニングが一般に広く使用されているが、ニーズとして石綿を含まないものも多く生産されている。またブレーキには制動性能の優れたディスクタイプのものは高性能車両用として焼結合金製のパッドが使用されている。

 石綿を含有するライニングで、初期のものは石綿で織った布がそのまま使用されていたが、強度、耐熱性、耐摩耗性等をもたすため、アスファルト、乾性油、合成樹脂などの結合材を含浸するものができた。これをウーブンライニングと呼ぶ。また車両の性能向上に伴い、いろいろな性能をもったライニングが必要となり、石綿繊維をそのまま有機結合材で結合したモールドライニングが開発され、現在では、このモールドタイプが専ら広く使用されるに至った。

 これらの摩擦材は、車両用に限らず、一般産業にも動力を伝える、また動力を制動する部分に多く用いられるが、特に重要部品としてクレーンやエレベーター等のブレーキ部品として必要欠くべからざるものとなっている。

2.2.5. その他の用途

 石綿の優れた特徴は、2.1.3.であげたが、石綿の応用製品として前述以外にもつぎのものがある。

1) 熱絶縁性を特徴とするもの

 ボイラーや各種の加熱炉あるいは配管等の熱損失を防ぐために保温材が用いられる。この保温材の材料としては一般的に無機質のものが使用され、熱伝導の技術的な要因の解明と供に、優れた保温材のニーズの高まりから、そのもつべき特性として、つぎのものが求められている。

  1. 熱絶縁性が高い(熱伝導率が小さい)
  2. 嵩比重が小さい
  3. 強度が大きい
  4. 耐熱性が高い
  5. 施工が容易で取扱いが便利である
  6. 経済的に有利である

 天然あるいは人造鉱物繊維の中で石綿は、全項目にわたる条件を満たす物質として、最も適合するものである。また、保温材の施工にあたり、いかなる材質のものを選定すべきか、つぎの事項を優先して決められる。

  1. 使用温度において長年月の使用に耐える
  2. 化学的に安定で、保温面を損傷しない
  3. 保温材内に水が侵入しても崩壊せず、原形を保ち水分が蒸発すれば元の性能にもどる

 石綿は燃えないで高温に耐えることから、保温(保冷)・断熱材として古くから用いられてきた。この特徴は石綿がもつ小さな嵩比重を応用したもので、ふわっとした綿状のものまたは紡織したものを高温(低温)となる物体に覆う、巻く、詰める等して、熱伝導率を小さくして損失を防ぐと共に、火傷防止、保温効率の向上を図ってきた。

 近年は、石綿以外にもこの目的を充分に果たすことができる材料も多く開発されてきたため、石綿を使用することはなくなったが、この目的で過去に製造された主な製品はつぎのようなものがある

2) 電気絶縁を特徴とするもの

 石綿は、電気的に不導体であり、一般の絶縁材料用として十分な性能を有し、多くの用途に使用されている。

  1. 石綿は無機質で耐熱性があり、電気機器で生ずる高温に安定で、しかも強度の低下、軟化溶融を起こさず寸法安定性に優れている
  2. 石綿は無機質で耐蝕性に優れ、腐食性雰囲気やそれらの高温にも耐える
  3. 低温時における硬化または脆化あるいは収縮等による影響を受けにくい

 電気絶縁材料は、絶縁抵抗、絶縁耐力が大きく、また誘導体力率が小さいものが要求される。更にもう一つの要求条件として上述のとおり高温で劣化しないことである。

 石綿製電気絶縁材料として、つぎのものが過去から製造されてきており、部品として家電製品等に組み込まれ供給されるものが多くあったが、現在では一部を除き使用されなくなった。

3) 細く大きな表面積を利用しているもの

 石綿が持つ特徴である耐熱性、耐薬品性に加え、繊維が細くしなやかで表面積がほかの繊維類に比べ非常に大きい特徴を生かし、化学薬品や熱湯のろ過、精製に利用される。これに使われる石綿布の種類はAAA級以上の密な織物が選ばれる。昨今は衛生上の観点から使用を制限されているが、過去にはつぎのものが製造使用されていた。

2.3. 石綿製品の製造工程

 石綿を原料とした製品の製造工程は、基本的な部分でほぼ同じ行程となっている。まず、石綿のほとんど全量が輸入され、その輸送形態は袋詰めされている。工程としては梱包された袋の解袋からはじまり、計量、開綿(解綿)、マトリックス等の混合、成形、仕上げの順で製造されていくものである。

 次に石綿製品を代表するものの内、現在および将来にわたって製造されるものの基本的製造工程を示す。

2.3.1. 抄造による建材の製造方法

 石綿セメント建材の多くの製造方法は、抄造方式により行われている。石綿、セメント等の主要原料を多量の混合水でスラリー化し、丸網抄造機(ウェットマシン)で抄造し、成形養生した製品群である。この製造方法によるものは、波形スレート、ボード類、パルプセメント板等がある。

1) 波形スレート製造フロー

1) 波形スレート製造フロー

2) ボード類製造フロー

2) ボード類製造フロー

3) パルプセメント板製造フロー

3) パルプセメント板製造フロー

2.3.2. 押出による建材の製造方法

 建材の多くは抄造方式により製造されるが、本製品の製造方法の特長として、原料に水を加えて粘土状の柔らかさに混合混練りし、それを押出機(エクストルーダー)で押出成形する。その他の工程はほぼ抄造方式に類似している。

1) 押出成形品製造フロー

1) 押出成形品製造フロー

2.3.3. 住宅屋根用建材の製造方法

 住宅屋根用建材の製造方法にはドライ法とウェット法があるが、代表的なドライ製品の製造方法を示す。この特徴は原料がドライの状態で配混合され、ベルト上に均等な厚さに供給された後に加圧一層成形される。製板時にセメントの反応に必要な水分を加えながら加圧、成形、オートクレーvブ養生する。また、ウェット製品は原料に水を加えスラリー状にして抄造機で抄き上げ、板状とする。加圧成形したものを蒸気養生して乾燥する。

1) 住宅屋根用スレート製造フロー

1) 住宅屋根用スレート製造フロー

2.3.4. 石綿ジョイントシートの製造方法

 石綿ジョイントシートは、石綿を主原料とし、それに溶解されたゴム及び配合剤を加えて攪拌、混合する。この原料を大小2本の鋼鉄ロールからなるアスベストロール(一種の圧延機)の大ロールを加熱及び小ロールを冷却し、その2本のロール間に原料を投入して薄く延ばしながら積層して緻密な積層板がつくられる。

1) 石綿ジョイントシート製造フロー

1) 石綿ジョイントシート製造フロー

2.3.5. 石綿紙・板の製造方法

 石綿、その他の原料を多量の水と共に攪拌しながら十分混合する。原料水を円筒形の丸網(シリンダー)に原料をすき上げて移し、単紙の場合は乾燥機にかけ、巻き取られる。また、石綿板の場合は所定の厚さに重ねられ、裁断後乾燥される。

1) 石綿紙製造フロー(*現在、我が国では製造していない)

1) 石綿紙製造フロー

2) ミルボード(石綿板)製造フロー

2) ミルボード(石綿板)製造フロー

2.3.6. 石綿紡織品の製造方法

 石綿紡織品は、繊維の性質から他の繊維産業とは異なり、糸の強度が小さく切れやすいので、設備の稼働速度は遅い。石綿の取り扱いから製織までの各工程では、水を嫌うため一般には乾式方法によって製造される。

1) 石綿紡織品の製造フロー

1) 石綿紡織品の製造フロー

2.3.7. 摩擦材の製造方法

 摩擦材は、ブレーキとクラッチに大別される。ブレーキはディスクタイプとライニングタイプに分類され、また、クラッチはフェーシングとして、それぞれに特徴を持つ製造方法がとられているが、原料を混合して熱成形するものと糸又は布をテーピングして樹脂を含浸し、加熱加圧成形するものがある。

1) ディスクパット

1) ディスクパット

2) ブレーキライニング

2) ブレーキライニング

3) クラッチフェーシング

3) クラッチフェーシング

参考文献[第2章 石綿を用いた製品の製造と用途]
1) 石綿工業製品 日本石綿製品工業会編
2) 『石綿・ゼオライトのすべて』(1987) (財)日本環境衛生センター
3) 1993技術資料「スレート」 スレート協会

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